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「真夜中のパーティー」(渋谷) 阿部力 内田滋 右近健一 中村昌也 徳山秀典 ☆☆☆ [演劇]

【作】 マート・クローリー
【訳】 小田島恒志
【演出】 青木豪
【出演】 阿部力 内田滋 右近健一 中野英樹 浜田学 中村昌也 徳山秀典 村杉蝉之介 山崎樹範
【会場】 PARCO劇場
【日程】 2010年7月4日(日)~19日(月・祝)
【料金】 6,500円
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【感想】
 一言で言えば、古典的な名作、あるいは時代劇ですが、米国での初演が1968年(昭和43年)と、右近健一さんや中野英樹さんが生まれた年ですから、仕方ないでしょう。

 1960年代後半、ベトナム戦争の時代、また、米国では公民権運動(黒人解放運動)の時代、まだ、ゲイの多くがクローゼットに閉じこもり、世間にはゲイであることを隠して、ひっそりと生きていた時代。それでも、週末には一夜の相手を求めて、夜の街を数多くのゲイが徘徊していた時代。
 そんな時代背景の芝居です。

 もう少し時代が下って、1980年代になると、エイズ(AIDS/HIV)がゲイの世界に蔓延し、「レント(RENT)」の世界となる。クローゼットに閉じ籠もったままで死ぬか、生きるためにクローゼットから出て戦うか、多くのゲイが選択を迫られる。


 マイケル(阿部力)やドナルド(内田滋)は、ゲイであることに悩み、精神科医に通う。劇中では、はっきりと語られないが、ドナルドがニューヨークを嫌悪するのは、ホモフォビアに襲われたからかも知れない。
 自由と民主主義の国アメリカは、偏見と差別に満ちた国でもある。ゲイだという理由だけで、あるいは、黒人だと言う理由だけで、通りを歩いていたら、殺されることもある。それに比べれば、俗に平和呆けとも言われるが、日本は実に幸せな国である。

 ユダヤ人でもあるハロルド(村杉蝉之助)は、そんな米国で戦い、力強く生きてきたゲイの一人。おネェ丸出しで、よく言えば、ニューハーフ、普通に言えば、オカマのエモリー(右近健一)や、黒人のバーナード(浜田岳)も、クローゼットに納まり切れなかったゲイ達の一人。

 妻子持ちのハンク(中野英樹)は、ラリー(徳山秀典)との愛のために、妻子と別れる決意をする真面目で誠実という希少なゲイの一人。一方、恋人のラリーは、ハンクを愛していても、他の男とも平気で寝る(セックスする)ような節操のない、どこにでもいるゲイの一人。ただし、ハンクもラリーも、ゲイであることや、自分の生き方(男のために妻子を捨てる、行きずりの男と寝る)を恥じたり、嫌悪したりはしていない。

 男娼のカウボーイ(中村昌也)は、少し変わっている。オツムが弱くて、ゲイと言うよりも、ウリ専のボーイという感じ。必ずしもゲイではないが、男性とのセックスを嫌悪したりせず、素直に受け入れてしまう存在。難しいことを考えていない、物事を深く考えていないだけかも知れない。

 そして、マイケルの大学時代の友人、弁護士のアラン(山崎樹範)は、ゲイや黒人を嫌悪する、当時の米国としては、ごく普通の白人エリートの一人。妻子を持つ教師であるハンクに対して、当然のごとく、親近感を抱き、オカマや黒人、ユダヤ人を当然のごとく、嫌悪する、当時の米国社会の象徴のような人間。

 以上のような時代背景を念頭に置きつつ、芝居を眺めると、それなりに楽しめます。


 さて、9人のキャスト、それぞれに面白い人達なので、少しずつですが、感想・印象を書いておきます。

 まず、主演の阿部力くんは、失礼ながら、こんなに芝居のできる役者とは知りませんでした。ドラマ「花より男子」の印象が強かったのですが・・・。
 この「真夜中のパーティー」では、9人の内、誰を主役にしても芝居が成り立つと思うのですが、今回、青木豪さんの演出は、マイケルが主役だと思いましたし、阿部くんは、それに十分応えています。
 本来、阿部くんは、もっと自信に満ちた、強い男を演じた方が似合うと思うのですが、今回、マイケルは、とても弱い男です。その弱さが今回、しっかり出てて、なかなか良かった。

 マイケルの恋人ドナルドを演じた内田滋くんは、芸達者な俳優という認識だったので、今回も、また、変わった役に挑戦しているなと思いました。2枚目なのか3枚目なのか、男なのか女なのか、その時々、舞台によって、色々と演じ分けられるのが内田くんの魅力でしょう。
 マイケルに接するときのドナルドと、ラリーに接するときのドナルドは、別人のようです。どちらかというと、ラリーに色目を使うドナルドの方が好きですけど・・・。

 右近健一さんは、河原雅彦さん演出の「EVIL DEAD THE MUSICAL~死霊のはらわた~」とか、劇団☆新感線の「薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive~」とか、これまで何度か舞台を拝見していますが、エモリーを演じなくても、面白い役者です。
 それに、今回は歌いませんでしたけど、歌えば、かなり上手です。

 中野英樹さんは、映画「遠くの空に消えた」や映画「UDON」で、観ているようなのですが、記憶にないので、今回が事実上、初見です。
 真面目で誠実ではあるけれど、面白味に欠けて、そうハンサムとも言えないハンクを「ラリーは、こんな男の一体、どこが良いんだ?」と、観客に思わせるような男として、演じてくれています。
 非常に個人的な意見ですけど、ハンクとラリーのような、根っからの浮気者と嫉妬深い一途な男とのカップル、好きです。

 浜田学さんは映画「陰日向に咲く」(ホームレスの父親を迎えに来る野球選手の役)で拝見していますが、その時は、それ程、印象には残っていませんでした。
 今回は、黒人のゲイという、ややもすれば、暗くなる役をコミカルに演じています。

 中村昌也くんは、とにかくデカイ。
 「ビロクシー・ブルース」とか舞台「パッチギ」でも目立ちましたけど、今回も、ガタイの大きさで目立ってます。それにしても、頭の弱い、大男の役から、そろそろ卒業しないといけないかも知れません。

 徳山秀典くんは・・・髪型が凄い。最初に登場した時は、エルドラドの似非フランス人かと思ってしまった。しゃべり方も、遊び人と言うよりは、何かホストっぽかった。演出なのか、役作りなのか、正直、それはちょっと違うだろう、と思ってしまいました。

 ところが、後半、「一人の男だけでは満足できない、色んな男と恋をして寝たいんだ、それが俺だ、それを受け入れろ」と実に身勝手で、無茶苦茶なことを恋人のハンクに要求する辺りから、がらりと人が変わって、面白くなる。
 さらに、ハンクに電話を掛けて、愛の告白をする頃には、すっかり可愛くなってしまって、そのままハンクの待つ2階のベッドルームへ・・・。

 ちなみに、個人的には、ハンクには、わがままなラリーに対して、「そんなの絶対に嫌だ、馬鹿じゃない」と怒って欲しいところですが、素直に「受け入れられるように努力する」という辺りに、ハンクは男(タチ)で、ラリーが女(ウケ)だなと思ってしまいました。

 村杉蝉之助さんは、昨年の「バンデラスと憂鬱な珈琲」を見損ねているので、初見です。(「バンデラスと憂鬱な珈琲」は、今年、WOWOWで放送したものを録画してある筈なのですが、まだ観てません。)
 本当は、とても弱いのに、色んなもので武装して、戦いながら生きているハロルドを実に不思議に演じています。

 山崎樹範さんはテレビ中心で舞台に余り立たない所為か、やはり初見です。
 この「真夜中のパーティー」の中で、アランは唯一のヘテロ(ノンケ)、部外者・ヨソ者と言うだけでなく、ある意味、悪役です。それも、単純に悪いだけの悪役ではなく、善良な悪役です。
 善意に満ちた普通の市民が何の悪気もなく、他人に害を与えてしまうということを示す、さり気ない悪っぽさが良かったと思う。


 ☆☆☆☆四つでも良かったのですが、如何せん時代劇だなぁと思ってしまったのと、もう少し現代風にアレンジしても良かったのではないかと思ったので、☆☆☆三つです。

 個人的には、ハンクとラリーのその後を二人のベッドライフも含めて、少し観てみたい気もする。
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コメント 2

machi

お邪魔します。
アランはノンケではないと思いますよ。
ただ、「他者」目線を代表するのがアランでしたが。
中村君がビロクシー・ブルースに出てたことにはじめて気づきました。
パルコはユダヤ&LGBT作品に結構果敢に取り上げますね。
by machi (2010-07-29 22:52) 

frhikaru

>machi

アランがノンケではないというのは、どの辺りから?

原作や映画はともかく、演出の青木豪さんの頭の中では、アランはノンケ、アランがゲイというのは、マイケルの妄想という設定のように、思えましたけど・・・。

by frhikaru (2010-07-30 07:17) 

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